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医療構想・千葉

第八回どこでもMYカルテ研究会開催速報

開会  どこでもMyカルテ研究会の歴史を振り返る
増山茂(どこでもMyカルテ研究会・東京医科大学渡航者医療センター)

どこでもMYカルテ研究会は4年にわたり、以下のような研究会を続けてきました。
第1回どこでもMYカルテ研究会: 2010年7月29日  我々の「どこでもMYカルテ」と内閣官房の「どこでもMY病院」構想
第2回どこでもMYカルテ研究会: 2010年9月30日  電子カルテの現状と問題点 モバイルを使った技術的諸問題
第3回どこでもMYカルテ研究会: 2011年7月7日  「災害時における医療・介護情報ネットワーク」—「東日本大震災復興へ向けて将来医療情報システムを先取りする 『どこでもMYカルテ』の実現」
第4回どこでもMYカルテ研究会: 2011年11月21日  社会保障番号制度の現状と医療情報ネットワークの関係
第5回どこでもMYカルテ研究会: 2012年6月02日  医療・介護・福祉を結ぶ どこでもMYカルテ
第6回どこでもMYカルテ研究会: 2012年10月20日  医療・介護・福祉情報の透明化と医療イノベーション
第7回どこでもMYカルテ研究会: 2013年10月26日  医療と介護の連携は認知症にどう対応できるか、ICTの果たす役割は

ここにみるように当研究会は当初は、「ドコデモMY病院」「医療と介護のシームレスな連携」といった、当時の政府の政策に呼応して発足している。
以後、電子カルテの問題、モバイル技術の導入、震災によって破壊され医療情報システムの問題点、ICT化の基礎となる社会保障番号などの課題を扱ってきました。
現在ではこれらのほとんどは技術的には解決されてきており、各地での成功事例報告も多数この研究会で発表されてきた。当今は、医療だけではなく介護福祉情報も含めてICTによる連携をという要請が強まっている。
施設及び在宅における医療・看護・介護、地域包括ケア、更には地域の生活支援サービスに関する様々な地域の情報を「住民視点で統合」し活用するための方法を探求し、現実に発生している複合的な課題を学際的・業界横断的に解決する新しい科学への発展が求められている。ある一人のPHR/EHRの統合を地域コミュニティーでいかに実現できるかが課題であるといってもいいでしょう。

今回の第8回どこでもMYカルテ研究会では、「生活者視点で地域包括ケアを支えるICT」をテーマに、地域包括ケアにこれまでの研究の取組みをどう組み込んでいくかを考えたい。
第一部では、若きリーダーに率いられて先進的取組をされてきた千葉市や和光市の経験を伺いたい。
第II部では病院など医療施設だけではない様々な職種の事例をお話し頂く。
第III部では医療介護福祉連携のためのICTシステムの基幹を作っているからお話を伺いする。

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13:10 ~ 13:40
1.熊谷俊人(千葉市長)
ビッグデータを活用した健康分野の課題抑制『けんこうコンシェル』

 私の前職はNTTコミュニケーションズであり、医療とICTを組みあわせるのは私のライフワーク。
 市の住民情報系システムが古いため、60億円かけて段階的にリニューアルしている。
 就任当初からマイナンバー法案は絶対通るとの信念のもと、マイナンバーを前提としたシステムの刷新を進めてきた。
 CIO補佐監を外部から採用するとともに、情報経営部を設置し、改革を進めている。

 行政サービスは申請主義であり、申請からすべてのサービスが始まる。
 つまり、課題が発生してからサービスが始まるので、課題を事前に抑制できない。
 行政サービスを知って、申請してもらわないとサービスを提供できない。
 例えば、風疹ワクチンも、対象者自らが申請しないと接種を受けられない。どこにどのような人が何人住んでいるのか、市役所は情報をもっているものの、対象者に直接アナウンスするのが困難。

 アナログ的には、生活習慣病の予備軍の方々を訪問して、保健指導をするような取組みを始めている。例えば、人工透析は高額療養費制度で本人負担には上限があるが、行政負担は莫大な金額になるためである。
 今後、医療を含めてビッグデータを分析し、効果のある施策を打ち出したい。
 マイナンバーは現在のところ医療分野について制約があるが、防災や福祉については自治体の裁量がある。医療・健康分野のけんこうコンシェルは平成26年度に国の実証事業を行う予定。

 ちばレポは、市民に課題を報告してもらう取組み。例えば道路の陥没などを市民が見つけてスマホで写真をとり、GPS情報を付けて送信するだけ。
 パトロールのコストを下げ、品質を上げることができる。写真があれば、現地確認の必要性有無も判断できる。
 また、市民に「まちを見る」意識を醸成して頂く。昨年7~12月にマイクロソフトとの協働で実証実験を実施し、マイクロソフトの先進事例としても海外で報告されている。
 今年は、9月までにシステムを構築し、10月から本格展開。
 レポート機能の強化だけでなく、市民が自ら課題を解決するサイクルを始める。
 例えば、落書きを消すというミッションを市民に実行して頂く。リアル版の SimCityあるいはミッションがもらえる意味でドラクエかもしれない。

千葉市の高齢化速度は早い。昭和20年と現在を比較した人口増加率は、全国の県庁所在地で千葉市が1位。10年間で人口が倍になった時代があり、その方々がまもなく75歳になる。
 千葉市の国民健康保険事業は、保険料を7年間1円も上げてこなかった時期があり、赤字が拡大した。 今、財政健全化に向けたアクションプランにより、国保財政を立て直している。

 国民健康保険だけでなく社保 (被用者保険) にも働きかけないといけない。
 現在、被用者保険と国民健康保険のデータ連携ができていないため、ある人が退職して被用者保険を脱退したという情報がない。
 被用者保険から脱退して無保険になっている住民を見つけ、国民健康保険への加入を働きかけないといけない。

 けんこうコンシェルでは、まず、保健指導による予防として、生活習慣病の予備軍にリスクを喚起し、健康活動を勧奨する。そして、保健師やスマホアプリ、イベントなど様々な手段で市役所から呼びかけを行う。その後の健診データの解析が非常に重要だが、そのスキルはが市役所には不足している。
 学術機関等と連携し、市役所に来て頂いて解析して頂くことも今後検討したい。学術機関としても、生データを扱えるメリットがあるだろう。

 民間の健康サービスは色々ある。市民がサービスを利用し、紹介料を民間事業者が市に支払う。紹介料を原資に、健康になった市民にポイントを付与する。
 保健師などがコンシェルジュとなり、健康サービスのメニューを市民に紹介する。予備群軍が要治療に悪化するのを少しでも食い止める。
 行政だけでサービスを考えても面白いサービスにならないので、民間と行政が連携する。退職して国民健康保険に加入してから予防するのではなく、被用者保険に加入しているうちに生活習慣病を予防する必要がある。
 特定健診受診率はせいぜい3割。健診すら受けない、受けても保健指導に行かない方々にどう行ってもらうかのインセンティブを民間と一緒に作っていく。また、健康活動と健診結果との因果関係をしっかりとおさえていきたい。
 本人に利用目的を提示して同意を取得することで、マイナンバーがなくてもデータの連携はできる。 例えば、公営住宅の家賃を決定するために、何千人何万人の市民が納税証明書の発行に毎年300円支払っている。またその書類を提出に来なければいけない。しかし、自治体はその情報を、本人に利用目的を提示して同意を取得すれば、使うことができる。
 千葉市は、ICTを一番活用する自治体になるべく、日々議論をしている。けんこうコンシェルは、そのうちの一つで、多くの意見をいただきながら進めていきたい。

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13:40 ~ 14:10
2.松本武洋(和光市長)
超高齢社会に対応する地域包括ケアシステム構築を念頭においた介護保険事業計画策定について
マクロの政策とミクロのマネジメント・・・第6期計画の策定準備・・・

 先々代の市長は医師でもあり、その頃からの福祉介護施策の継続により成果が出始めている。
 最初の頃は市会議員として、ここ5年は市長として施策に携わってきた。

 和光市は法制度の趣旨を素直に受け止めて実行している。
 平成14~15年度で介護予防を始めた。平成18~19年で地域密着型サービスを実施し、要介護認定者の伸びを抑え最近では低下させている。

 当たり前の自立支援を建前ではなく愚直に実行している。全員のデータを把握し、生活圏域別のデータを把握し、市町村特別給付を導入しているのが和光市の特徴である。
 介護保険法制定当時は「年寄りに筋トレやらせるのか」「年なんだから楽させてれ」という意見も聞かれた。
 きめ細かいADL把握による必要最低限の介護サービスと回復サービスを組合せることでQOLを高めていく。

 和光市の地域包括ケアシステムでは、高齢者個別の課題及び地域の課題(圏域ニーズ)の把握を重視する。アンケート調査をして終わりではなく、アンケートが返ってこない世帯こそがハイリスクであり、その世帯に戸別訪問を行っている。データの利用に関して同意しなかったのは10年間で9名のみである。これをやっているので市役所側からアウトリーチできる。
 地域包括支援センターの中核である和光市コミュニティケア会議が多職種連携の調整をするチームケア会議である。ここで困難ケースを共有し、ケアマネジャのスキル向上につながっている。

 日常生活圏域(北、中央、南エリア)ごとに課題やリスクが違う。
 例えば認知症リスクについては、和光市北エリアは道路事情が悪く、散歩しにくい。足のトラブルリスクが北エリアに多い。閉じこもりにも地域差が見られる。
 サービス必要量(ニーズ)はかなり的確に地域ごとに把握でき適切な対応を取る。市として歓迎する事業者に補助金を出すことで、緩やかな供給調整を行っている。拠点型サービス付き高齢者住宅等を建設する際は、パブリックスペースを設置して頂く。パブリックスペースは高齢者専用ではなく、地域づくりの拠点として子供や主婦のコミュニティが利用してもよい。

 長寿あんしんプランの基本方針は単なるスローガンではなく、全て具体的な施策に分解して落とし込んでいる。例えば、管理栄養士付の配食サービスや有償運送特区を活用した送迎サービス等に特別給付を行っている。エレベータの無い古い団地の5階に居住する高齢者が階段を登れなくなれば買い物にでられなくなり要介護要支援が必要になるかもしれない。しかし1階に転居すれば済むことであり、これに補助金を出す、というきめ細かな対応をしている。

 よくマスメディアで、和光市の高齢者がカジノを楽しんでいる姿が紹介されるが、彼らはカジノのためだけに集まっているのではない。
 運動機能向上、閉じこもり予防など、様々な介護予防支援事業を行っている。
 単なる食事のヘルパーではなく、栄養士のスキルをもったヘルパーが食事支援サービスを提供する。運動機能向上プログラム参加者も、楽しそうにおしゃべりしながらトレーニングしている。

 和光市で介護に従事するとスキルアップする。介護予防プログラムを卒業した方には、同じ事業者が同じ場所で卒業者向けのプログラムを継続的に提供する。
 改善可能性が高い方に対しては積極的に改善支援サービスを提供する。
 介護予防・日常生活支援総合事業が大切である。要支援者に対する介護予防には投資価値がある。和光市では、一部で言われている要支援切りは行わない。

 要介護(要支援)認定率は、平成15年に横這いになり平成18年の12%をピークに以降は低下し始めている。平成25年には9.6%となった。これは全国平均の約半分である。認定を難しくしているのではないかとの指摘を受けることがあるが、光市では逆に戸別訪問を行って対象を掘り起こしかつ積極的に介護予防施策を行っている結果として、認定率が低下している。きめ細かいケアマネジメントの効果は当初計画以上に出ている。

 市場原理に従えば、市場メカニズムが需給を調整することになっているが、調整過程の複雑で困難な状況を高齢者に味わせていいのか、という疑問はある。

 日常生活圏域におけるサービス基盤整備であるが、居宅介護の限界点を高めることを目標とする。様々な施設機関人材の活用により、現在和光市にはおとまりデーはない。

 医療と介護の連携では、和光市には国立埼玉病院があり、連携が重要になっている。富士フイルムのカルナシステムがあり、地域医師会と連携している。
 和光市と埼玉病院も連携し、本人同意に基づいて介護保険のサービスデータと埼玉病院の一部医療情報をお互いに共有している。
 どういう状態の方が退院して介護サービスを受けるのか、どのようなADLの方がこれから入院するのか、お互いに共有できている。

 コミュニティケア会議が、マクロな介護保険事業計画とミクロな自立支援・予防をつなぐ核となる最重要機能を担う。
 中央コミュニティケア会議に保健福祉部長が毎回出席し、全ての困難ケースを把握している。その下に地域コミュニティーケアセンターを置く。
 ケアマネージャーの育成、専門性の向上が、キイである。和光市でケアマネジャーの業務に従事するには、和光市独自の研修を受講する必要がある。
 ケース資料は事前に読み込み、課題を把握してから会議を始める。サービス計画書の様式は統一されている。

 決して支援を抑制してはならない。改善させるためのコミュニティケア会議である。きめ細かい事後予測を実施している。
 現状のADLだけでなく、その理由・原因を明らかにし、きめ細かい改善目標を設定する。生活行為評価票による現状評価と予後予測の整理票を用いている。

 要支援1の6割は改善させられる。具体的な目標を設置することが大切。例えば、もう一度名古屋の孫に会いに行くなどの目標を設定し、インセンティブとする。

 人的側面から言うと、ボランティアを大切にすべきである。和光市では、3日間の研修を終えたあとボランティア活動に従事している。少数精鋭のボランティア体制を設置しており、例えば健康相談室をボランティアが管理している。
 和光市には現場を任せても大丈夫なサービス精神にあふれるボランティアがいる。要介護1から回復した方がボランティアとしてボランティアを仕切っており、自分でおかずを作って振舞っている。回復・改善の喜びを味わって頂きたい。和光市の理念に従ってケアをすれば効果が実感できる。

***質疑応答***

質問(黒岩):
姫路は関西ということもあるが、サービスを利用しないと損だと考えている利用者がいる。風土づくりのアイディアや施策を教えて頂きたい。

松本市長:
認定されていない人のためのサービスをある程度用意し、介護保険料の払い損だと思わせない。フルパッケージのサービスを提供すると、自分でできたことまでやらなくなってしまいます。
自分でできないことだけ最低限の支援を行う。意識が変わるまで時間がかかる。数字が出たことで議会も変わった。

質問(竜):
医師の役割は要らないくらい多職種がパワーを持っているのか?

松本市長:
医師がいることでより高品質なサービスを提供できているところもあるが、地域によってはまだ完備できていない。

質問(竜):
アンケート未回収世帯へのアセスメントがしっかりしている。ケアマネジャーが相当のプライドを持っている。医師の顔色をうかがってしまうとうまく連携できない。要介護体験者が介護の現場で活躍するのは初めて聞いた。素晴らしい。

松本市長:
当初は医師からも効果について疑問はあった。いまでは、医師会長がケアマネジャーの資格を持っていることもあり、理解は進んでいると思われる。

質問(河合):
何かのツールを使ってコミュニティケア会議のナレッジを事前共有しているか?コミュニティケア会議を誰がコーディネートしていて、コーディネータをどのように養成しているか?

松本市長:
10年前からコミュニティケア会議では全員がノートPCを開きながら議論している。事前にデータが配布されている。コーディネータは保健福祉部長。中央会議の場合、部長以外の職員ではなかなか務まらないのが課題。

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14:10 ~ 14:30
3.野口聡(経済産業省関東経済産業局地域経済部長)
超高齢化社会における地域のケアサービスと食を通じた地域活性化

経済産業省商務情報政策局情報政策課企画官(電子政府担当)・情報プロジェクト室長や内閣官房情報通信技術(IT)担当室内閣参事官などとして医療情報化政策に携わったことがきっかけで第一回からこの研究会に関わっている。
 2011年5月にまとめた医療情報化タスクフォース報告でも、医療だけでなく介護との連携の重要性を検討していた。医療側と介護側とも情報の共有が必要であるにもかかわらず、当時は医療と介護の間に高い壁があり、共通言語もなく連携対象の情報も決められなかったためなかなか医療連携ネットワークがつながらなかった。
 この課題を解消するため、医療機関等から個人が自らの医療・健康情報を受け取り、それを自らが電子的に管路・活用することを可能にする「どこでもMY病院構想」を提案した。いまもその精神はこの研究会で生きている。

 2012年5月より経済産業省関東経済産業局に異動した。
 2020年のオリンピック・パラリンピックのチャンスを関東広域もしくは日本全域に広げたい。
 今後東京都の高齢者はケアの供給能力を超えて急増する。地域包括ケアは地域完結と言われているが、地域で完結できるだろうか?一方で過疎化が問題となる地域がある。
 たとえば、杉並区と静岡県南伊豆町が連携し、特別養護老人ホームの建設を計画している。
 関東地方において、今後、高齢者単身世帯又は老老介護世帯や認知症高齢者の増加等が見込まれる中で、現状では、都市部においては特別養護老人ホームの建設等がコストや用地確保等の観点で難しく、個々の地域だけでは十分なサービスを提供できない可能性がある。
 一方、一部の地域においては、高齢者と併せて医療・介護関係事業者を地域に受け入れることによって地域活性化(消費増加)、地域コミュニティの維持等を目指したいとの要望がある。
 地域を超えて連携し、高齢者が集まるケアタウンを構築することで、高齢者のケア、雇用、地域活性化を達成できないかと考えている。地域を越えた連携による介護福祉サービスの充実は、高齢者のQOL、QODの向上につながるであろう。

 高齢者による農作業、地域の食材を使った関連サービスなども考えられる。今後急増する要介護の高齢者に対して、地域資源である地域の食材を活用した産学官連携での介護食の研究開発や家族・地域住民がともに楽しめる本物志向の料理を提供するなどのプランを考えている。
 ただ、広域連携には介護保険制度等、制度上の課題もいくつか残っている。

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***第一部 共同ディスカッション***

質問(増山):
両市長とも革命的仕事をされているが、いわゆる抵抗勢力はあったのではないか?

松本市長:
成果が出てくるまでの時間をどう我慢するかが重要だった。

熊谷市長:
リスクを取ろうとする時、市の担当者は、議会説明に相当労力を使う。市長直轄で急ぐより、我慢をして、時間をかけて組織的に動けるようにすることが大事。

野口部長:
医療情報化タスクフォースを進める時に、一部の医師からの反発は有った。ただ、どこでもMyカルテ研究会のように賛同してくれる医師もいたので、構想実現のためにはそういった医師等との仲間づくりが大事。

質問(田口):
和光市と千葉市で規模が違う中で、千葉市はどう見たか?

熊谷市長:
千葉市は規模が大きいので、モデル地区から始めるのがよいかもしれない。

松本市長:
人材育成には時間がかかる。じっくり人材を育成し、人材が育った地区で始めることが重要。和光市の次期を担う人材も現在育成中。

質問(尾林):
ケアマネジャ等の育成のためにどのようなインセンティブがあるか?

松本市長:
ケアマネジャの育成には喜びを実感することが重要。和光市では厳しく鍛えられるという評判があるので、大手介護各社もエースを和光市に派遣して頂いている。

質問:
住む街を選ぶ観点からすると、千葉市や和光市のホームページ上で、施策に関するアピールが足りないのではないか。

熊谷市長:
千葉市のホームページでは千葉市内の都市比較というコーナーを設けて、小児科医の人口比などのエビデンスを示している。また、物件情報に表示させる情報を増やそうとしたり、今後はオープンデータ、オープンガバメントの流れの中で、千葉市のあらゆるデータを特目見化して地図上で表示したい。

熊谷市長:
千葉市のホームページでは市の紹介ページで、人口あたりの小児科医数などのエビデンスを示している。また、不動産業界の物件情報に表示させる情報を増やそうとしたり、今後はオープンデータ、オープンガバメントの流れの中で、千葉市のあらゆるデータを可視化して地図上で表示したい。

松本市長:
自治体ランキングを見て居住自治体を選ぶような、食い逃げする消費者的市民ではなく、やるべきことを実直に進めることで、和光のまちを気に入って頂ける方に、一生住んで頂きたい。

質問(西田):
基礎自治体に権限を移譲すると宣言しておきながら、国が全体を管理している現状は何も変わっていないのではないか?

野口部長:
国及び地方局は、個々の自治体でできない広域連携を支援している。

質問(松尾):
医療分野でのマイナンバーはいつ実現するのか?

熊谷市長:
5年後にようやく検討が始まる。マイナンバーの医療個別法の成立はその後だろう。しかし一方、「福祉」については自治体が条例で実施できる。極論すれば、住民への行政サービスは何だって「福祉」になる。自治体がリスクを負って先行事例を作ることができる。本人が同意すればできる。実例をつくればいい。

松本市長:
厚生労働省の社会保障ナンバー制度は、多額の二重投資になる。その分本体が遅れることになる。何とか(マイナンバーと別立ては)やめていただきたい。

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15:00 ~ 15:20
1.平野清(柏市医師会 理事)
柏市の在宅医療における多職種連携(柏プロジェクト)

 既存の開業医などのプレーヤーをどう巻き込んでいくか。今後は大都市圏で高齢化が進行する。都市部では入院患者が増え続ける。

 柏市では豊四季台団地の建て替えに合わせて研究会を発足させた。いつまでも在宅で安心して生活できるまち。いつまでも元気で活躍できるまち。
 在宅医療を推進するための取組みは5つ。バックアップシステムの構築や、多職種連携の推進など。柏市を3地域に分けて、かかりつけ医のグループ形成によるバックアップを、まずは南地域で実施した。

 コーディネート症例が37症例。システム症例が22症例。患者の属性。疾患内訳ではがんが多い。認知症も増えてきた。
 参加職種は主治医・副主治医・訪問看護・歯科・薬局・ケアマネジャから始まり、現在は全ての職種がシステムを利用して連携している。
 病院のバックアップ体制を確保するために、取り決めを行った。

 在宅医療多職種研修も実施している。現在はプログラムを簡易化して提供している。
 在宅医療の現場を見に行く。主治医数や在宅療養支援診療所が増加。看取り数も増加。
 訪問看護の充実、医療職と介護職の連携強化。WGの中でシステムへのフィードバックを行い、構築していった。
 顔の見える関係会議も開催。職種の壁を越えたフラットな議論ができる場を提供した。顔の見える関係性があってこそのICTだと思っている。柏地域医療連携センターの設置もした。

 柏モデルは作ってみたら非常に上手くいった、というのが実際。スタート時点で実質3人の在宅医師しかいない中で研修を拡大していき、顔が見える中で仲間意識を持った多職種ネットワークを構築できた。

 在宅医がなんの対応もせずに救急車を呼べと指示するは趣旨に反している。
 その思いが反映されたルールである。熱意を持って語りかけて、病院にも理解してもらった。

 平野理事自身が副主治医として往診を行ったのは3回。ひとつは主治医が深夜3時に起きることができなかった。もうひとつは主治医が午前中病院で検査業務を実施しており対応できなかった。もうひとつは、病院から在宅に帰った直後で、まだ契約をしていなくて主治医の連絡先が分からなかった場合。現在は主治医も頑張っている。
 副主治医としての在宅療養支援の報酬加算は無い。通常の往診料のみ。

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15:20 ~ 15:40
2.五郎丸徹(学研ココファン 常務取締役)
『地域包括ケアシステム』の実現に向けて ~ ココファン柏豊四季台における先進事例 ~

ココファンシリーズというブランドで、全国に44棟のサービス付き高齢者向け住宅(以下「サ高住」という)を展開している。

 同社は2014年5月1日、高齢者の割合が43%を占め、うち半数が独居である柏市の豊四季台団地内にココファン柏豊四季台をオープンした。5月末での入居率は約50%のとなり、居室スペースの広い自立型が一番人気。介護型は若干余裕がある。
 ココファン柏豊四季台はその運営について、介護分野を長岡福祉協会が、在宅医療分野をスギメディカルが担い、トータル的なコーディネート、住宅とグループホーム、そして子育て支援施設をココファンが担っている。3事業者が連携する必要があるので、様式や運営マニュアルも共有している。ICTを導入する前に事業者間の運営ルールを明確化する必要がある。

 それぞれの分野で最高レベルの実績を持つ3事業者がコンソーシアムを組むことにより、全国に通用する汎用性の高い「地域包括ケアシステム」を構築できるのである。今後、強みを生かしたこのようなスタイルは、ますます増えていくだろう。

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15:40 ~ 16:00
3.黒岩勝博(姫路医療生活協同組合 代表理事・専務理事)
姫路医療生協がめざす地域包括ケアと介護・医療連携、人づくり

医療生協は医療機関を持っているのが特徴。東京にも15ほどの医療生協が有る。

 姫路医療生協の概要。組合員数が2万1千人ほど。在宅療養支援病院(56床、うち地域包括ケア病床32床)を1つ、また内科の診療所が1つ、歯科診療所を1つ持っている。年間収益は40億円、医療4割、介護6割。医療生協は医療と介護を含めた形で、1事業者として地域包括ケアを実践している。

 法人として、地域包括ケアの指針を持っている。利用者の選択とプライバシーを守る、など5点。
 組合員参加の形で全ての事業を運営している。訪問・通所・地域密着型の在宅サービスに特化している点など。定期巡回含め、やっていた事業に対して、後から制度がついてきた印象である。
 点から線に、線から面にという形で対象地域を拡げてきた。スポットのみで事業所を立ち上げても経営的にうまくいかない。

 今後の3つの軸として、認知症ケア、生活リハビリ、在宅緩和ケア(在宅看取り)を上げている。
 いきいき健康体操やまちかど健康チェックを組合員自らがスタッフとなって企画・実行している。

 職員育成には4つの視点を重視している。認知症ケアと生活を豊かにするリハビリを学び実践できる人づくり、など。顔の見える関係づくりと連携強化についても、全ての職種がそろっている法人なので、法人としての全体研修の中で、グループワークを行えば多職種間でのコミュニケーションがとれる。

 姫路市長は在宅看取りができていないという問題意識を持っている。姫路市医療介護連携会議が先月立ちあがって、そこに参画した。

 地域包括ケア病床については、厚労省として必ず在宅に返すという意識が表れている。在宅では必ずしも密度の濃い医療が必要ない中で、包括報酬というのはやりやすい制度だと思っている。また医療と介護が対等でないといけない。そのためにも、介護を先にし、介護と医療の連携と表現している。

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16:20 ~ 16:40
1.武藤真祐(医療法人社団 鉄祐会 祐ホームクリニック 理事長)
超高齢社会を包括的に支える ICT を活用した在宅医療・介護・生活支援プラットフォームの構築

 第4回どこでもMYカルテ研究会の頃に考えていたことが少しずつ実現している。
 スタッフ70名、うち医師30名強。患者 約700名。年間看取りが120〜130名。
 在宅医療を通して、生活を支えるコミュニティがなければ、医療や介護を提供しても足りない部分があることが分かってきた。

 祐ホームクリニックはCredoを唱和して経営理念を統一している。企業理念は「自分らしい最期を過ごすことが出来る、希望ある社会の創造」である。

 在宅医療へのICTの導入は、「医療の質担保」、「医師の負荷軽減」「オペレーションの最適化」、「リスクマネジメント」を目的としている。
 訪問ルート作成やスケジュール管理が出来る在宅医療クラウドを富士通と共同開発した。患者宅をクリックするだけでルート設定。駐車場や玄関の位置も初回訪問時に登録している。また、移動中にカルテのディクテーションを行うことで、カルテを書く時間が劇的に削減された。

 病院と診療所の連携は、専門職同士の連携で共通の用語でコミュニケーションできるが、医療と介護はそうでもない。これをいかに共通の指標で連携していくかが大切である。
  共有される情報はサマリではなく日々のケアの情報であり、セキュリティに対する考えも異なる。情報共有は一方向ではなく双方向のコミュニケーション。日々の訪問記録などのケア情報共有にあわせて、カレンダやメッセージも共有されている。

 石巻では情報を集めるのが大変だったので、ICTサポートセンターでの入力代行の仕組みを構築した。音声、写真、FAXの情報を集めて、システムに入力した。
 離れて暮らす家族も、訪問時の様子やケア情報を一部参照できる仕組みを構築した。

 2011年9月、石巻での分院の開業当初は、武藤理事長はある意味で「よそ者」だった。
 しかし、地域の医療・介護事業者との連携体制の確立を大切に考え、2012年8月に石巻 在宅医療・介護情報連携推進協議会を設立して、在宅医療と介護の連携を推進してきた。
 アンケート調査では、この連携システムの活用によって、医療・介護従事者、患者本人/家族ともに連携に対する満足度が高くなった。システムの継続利用の意向も高かった。
 医療・介護の連携だけでは支えきれない、買い物、住宅、法律、財産、生きがいなどの様々な生活サービスを提供する生活支援クラウドを構築した。

 社会の仕組みの中で、「孤立して要介護に近づく住民を早期発見できないか?」というのが問題意識であり、医療介護事業者やコミュニケータが収集した情報が生活支援クラウドに集まる仕組みを構築した。

 「ラストワンマイルをどう埋めるか?」「コミュニティをどう形成するか?」「収集・分析プラットフォームをどのように構築するか?」という課題に、ICTを活用した在宅医療・介護・生活支援プラットフォームの構築を通して、取り組んでいきたい。

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16:40 ~ 17:00
2.井堀幹夫(東京大学 高齢社会総合研究機構 特任研究員)
在宅医療・介護情報連携のガイドラインと ICT

 前職は市川市職員としてICTを38年間担当していた。
 先進事例は柏をはじめいくつかあるものの、全国的にみると地域連携の環境はまだまだ整っていない。
 全国1200箇所のアンケートを行い、関係各社が集まる委員会で在宅医療・介護情報連携の標準化を検討した。

 アンケートでも、本人同意について自治体職員から不安、戸惑い、誤解が多く寄せられた。
 在宅医療従事者と介護従事者が個人データを共同利用する際、法的には本人同意を改めて取得する義務はない。
 一方、情報システムの試行的な運用に対して本人同意を取得することとした。

 共有すべき情報項目を基本86項目、選択151項目を抽出した。今後、標準化団体に標準規格の策定を進めて頂く。

 現在は、業務システムと情報共有システムに二重入力が発生している。
 連携基盤により、異なる業務システム間で情報交換ができるようになり、多職種が必要な情報を他のシステムから入手できる。
 マルチベンダ、マルチフィールドで連携するための基盤を構築し、平成26年1〜3月で実証を行った。

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開会  どこでもMy カルテ研究会~次代への展開に向けて
竜崇正(医療・福祉ネットワーク千葉理事長)

どこでもMyカルテ研究会を始めて、介護連携までたどり着いた。
実は医療連携はまだ進んでいない。
高齢者同士がお互いに支え合って生活するためのツール
自分の医療と介護の情報をLINEで連携できるかもしれない。

溝尾朗(JCHO 東京新宿メディカルセンター 地域連携・総合相談センター長)
医療や介護にかかわる、職種による認識の格差は得られる情報較差に依存する部分も大きい。
情報を共有することでこの格差が縮小する。
医療介護情報の院内共有、地域共有によって、職種間の認識格差も縮小してゆく。
これからは、患者や家族も加わるコミュニティに向かっていく。
次回は新しい時代のコミュニティをテーマに開催したい。

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