トピックス
「第四回どこでもMYカルテ研究会」講演サマリー
分散クラウド
森本 伊知郎(NRIセキュアテクノロジーズソリューション事業本部)

サマリー
医療情報を病院外、特にクラウドに保存することが許されているとはいえ、セ キュリティの観点から素直に預けられないのが実体であると思われます。しか し、震災の影響等を考えると、BCP対策として外部に情報を預けること、或いは 少なくとも外部にバックアップを取ることを考慮する必要があります。NRIセ キュアは、機微な情報を非重要情報化した上で、日本中に散在するクラウドにて 分散保管するサービスを展開しております。これがどこでもMYカルテの実現に寄 与できるのではと考え、この場をお借りしてご案内させていただきます。
医療情報をはじめとした機密情報・個人情報をクラウドに預け入れる場合、セ キュリティをどのように担保するかといったことが必ず議論される。独自に暗号 化を施してから送付する場合もあり、クラウド事業者にセキュリティ機能を委ね る場合もある。しかし、せっかく安くて使い勝手の良いはずのクラウドの特徴を 損なうことにもなりかねない。
NRIセキュアが着目したのは、重要情報をそのままクラウドに預けようとするか ら問題になるのであって、預け入れる前に重要で無くしてしまってはという発想 である。具体的には、元情報に乱数を掛け合わせた上で、ファイルをビット単位 で撹拌してしまう。次に、その状態のファイルを複数の断片に細分化し、個々の 断片1つでは元データが復元できないようにする。更に、それぞれの断片を日本 中に散在する異なったクラウド事業者に送付する。これにより、セキュリティと BCP対策を同時に実現することが可能になっている。
このサービスを利用すれば、病院間で患者情報を授受する場合もメールを利用す る必要が無くなる。個人情報の誤送信防止策にもなる。また、患者情報を共有で きる医師や病院も制限することが可能で、例えば治療前と治療後で情報にアクセ スできる権利を設定変更することも可能になる。
NRIセキュアでは、どこでもMYカルテの1つの実現手段として当該サービス利用を 検討しており、協業者を募った上での実証実験も企画していきたいと考えている。

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シンクライアント(医療クラウド)
梅崎 泰司(富士通(株)医療ソリューション事業部第5ソリューション部)

サマリー
地域医療連携ネットワークは二次医療圏での地域の中核病院を中心とした前方・ 後方連携から都道府県レベルの三次医療圏への拡大のニーズが高まっています。 二次医療圏での地域医療連携ネットワークが既に構築され運用が始まっている地 域では二次医療圏を相互に接続することにより三次医療圏での地域医療連携ネッ トワークの構築が可能となります。
このような接続による情報の連携、融合のためには、共通基盤での標準化規約に 則ったデータの格納及び参照の仕組みが必要となります。また、患者IDの紐付 けを広域で行うために共通番号を活用することが望ましいと考えます。データの 格納仕様についてはSS-MIX標準化ストレージ及びSS-MIX拡張ストレージとDICOM を基本としリポジトリ情報として格納します。また、広域での参照のためにレジ ストリ登録を行います。
また、クラウド・コンピューティングを活用した医療情報システムの災害対策に ついてもご紹介します。
医療情報システムの災害対策のポイントは
 ・「診療データの保全」
 ・「確実なシステム復旧」
 ・「被災直後の診療業務継続」
であると認識しており、この3点を支援する仕組みを提供します。ニーズにより 上記の機能の組合せ、あるいはシステムの利用可能範囲を選択可能です。
データの保全はネットワーク経由のオンライン・バックアップにより実現し、 データの復旧は媒体輸送と現地でのデータリカバリにより実現します。また、被 災直後の診療業務継続のために、SS-MIX標準化ストレージを参照する仕組みを提 供します。SS-MIX標準化ストレージで規定される患者属性、病名、処方、検査情 報を参照していただくことにより、診療業務の継続を支援します。

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パーソナルクラウド
近藤 知子(ソフトバンクテレコム(株)クラウド事業推進本部)

サマリー
クラウドの定義についてお話しさせていただき、クラウド提供者にとって、これ からのクラウドに求められる価値とは何か、何を考えていかなければいけないの か、クラウド利用者にとっては、どのようにクラウドを活用していけばよいの か、どのような観点でクラウドを選択すればよいのかといったことについて、考 察させていただきます。
提供者・利用者にとってクラウドに求められるものは何なのかということを考え ていただいた上で、今注目したいクラウドサービスとして以下の4つのクラウド をご紹介させていただきます。
①SaaSクラウドモデルとして各種アプリケーションから開発環境まで提供する グーグル社のGoogleCloud
②音楽・写真・書類すべてをクラウドに保管することにより、どこからでもどの デバイスからでも簡単に必要な情報にアクセスできることを実現するAppleが提 唱するiCloud
③モバイル端末の利用を前提とし、場所に依存しない新しいe-learningワークス タイルを促進することを目的としたサイバー大学が提供するmoodleを利用したア カデミッククラウド
④Softbankが提供する総合的なキャリアとしての特性を活かしたホワイトクラウド 最後に、単一機のクラウドを利用から、クラウド認証・クラウド連携の機構を 使って、複数のクラウドを組み合わせてで利用されているケースも多くなってき ていますので、実際に利用されているお客様事例をベースにマルチクラウドモデ ルについてご紹介させていただきます。

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群馬県利根中央病院を中心とした遠隔医療
郡隆之(利根中央病院)

サマリー
沼田利根医師会,病院群輪番制参加病院を中心に沼田保健医療圏の救急医療ネッ トワーク基盤に,遠隔医療支援システムを導入し,以下の3点の確立を目標とした。
1)地域の各施設の画像の共有
2)テレビ会議付き遠隔画像診断システムを用いた他施設とのコンサルト
3)患者のたらい回しの抑制,地域の救命率の向上,適切な治療介入による医療費 増加の抑制
本システムは総務省の平成21年度地域情報通信技術利活用推進交付金を用いて構 築した。救急輪番病院では全施設でネットワークを導入し,診療所は医師会が指 定した医療機関に設置した。参加施設は、救急輪番7病院,および16診療所で あった。機器設置は3月末、4月試験運用開始、5月画像送受信の運用ルール決 定し、画像の共有運用開始した。開業医間でのテレビ会議の運用も開始した。
本研究開始時の平成22年度目標件数は240件であった。
平成22年度実績は626件で達成率260.8%と目標件数を大きく上回った。
現時点での有効性を検討すると、
1)地域の各施設の画像の共有→施設間で進んでいる
2)テレビ会議付き遠隔画像診断システムを用いた他施設とのコンサルト
  →開業医有志間のみで行われたが、病院間はシミュレーション予定
3)患者のたらい回しの抑制,地域の救命率の向上,適切な治療介入による医療費
増加の抑制→有効性の評価まで至らず。
本システムの導入時にITリテラシー不足による使用制限の問題が認められた。多 施設での遠隔医療システムの円滑な運用のためには,各施設のITリテラシーの調 査,運用規定の十分な検討,段階を得たシステム構築が重要であると思われた。

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千葉市の在宅緩和医療における取り組み
浜野公明(千葉県がんセンター経営戦略部長)

サマリー
千葉県がんセンターは、がん診療連携拠点病院として、終末期がん患者に対する 在宅緩和ケアについて支援体制を整備している。在宅療養患者の訪問診療を行う 診療所の医師及び訪問看護ステーションの看護師からなる在宅緩和ケアチームに 対して様々な支援を行い、質の確保された緩和ケアを患者とその家族が安心して 継続的に受けられることを目指している。主な支援内容は、患者・家族の希望に そった在宅緩和ケアチームの調整、チームの緩和ケア実施における研修・相談支 援、在宅療養困難時の後方支援病床の確保である。
我々の支援体制は、緩和ケア診療所や在宅支援診療所はもとより、かかりつけ医 が在宅緩和ケアに係わることを可能とし、地域の在宅緩和医療参加者の裾野が広 がることが期待される。その実現に向けて、千葉緩和ケア地域連携研究会を設立 して在宅緩和ケアの地域連携クリティカルパスを開発・運用し、さらに千葉市医 師会と協定を結ぶことによって包括的な支援を展開している。この活動を通じ て、千葉市及び周辺地域を基盤とする在宅緩和ケアを実施する人的ネットワーク が形成された。
今回、このネットワーク基盤を活用し、在宅がん患者に対するスマートフォンを 使用した遠隔診療の有用性について検証した。研究計画は遠隔医療学会「我が国 における在宅遠隔診療の有効性と安全性に関する研究」(研究代表者、酒巻哲 夫)に沿い、総務省「訪問診療における遠隔診療の効果に関する前向き研究」を NPO法人医療・福祉ネットワーク千葉が受託し、新たに千葉在宅緩和医療推進研 究会を設立して実施した。千葉市及び周辺地域の在宅療養がん患者9名を対象と し、対面診療と遠隔診療を行う患者群(遠隔診療群)7名と対面診療のみを行う 患者群(対照群)2名との間で比較した。在宅がん患者及びその家族のQOL、訪問 診療におけるイベントの発生率等を3か月間にわたって収集した。遠隔診療の実 施においては、通信機器を訪問診療医と訪問看護師のチームに2台ずつ配布し、 訪問看護実施時に看護師が通信機器を操作して医師と患者を中継した。
遠隔診療を経験した訪問診療所4施設に対する聞き取り調査によると、遠隔診療 の利点として、face to faceのコミュニケーションによる患者の安心、視診とし ての有用性、訪問診療を行うべきかのスクリーニングとしての有用性が挙げられ た。現在、収集データの解析中である。