「第五回どこでもMYカルテ研究会」開催速報
■第五回どこでもMYカルテ研究会開催速報
~医療・介護・福祉を結ぶどこでもMyカルテ~
主催 どこでもMYカルテ研究会
共催 医療構想・千葉 http://iryokoso-chiba.org/
NPO法人医療福祉ネットワーク千葉 http://www.medicalwel.com/
日時 2012年 6月 2日(土) 13:00~17:30
場所 東京海上日動ビル新館15階 第一会議室
総合司会 田城 孝雄(順天堂大学健康学科教授)
溝尾 朗(東京厚生年金病院内科部長)
総合司会はこのお二人で行われました。引き締まったいい進行になりました。
13:00
開会の挨拶 増山 茂(どこでもMYカルテ研究会・東京医科大学渡航者医療センター)
過去4回の研究会を振り返り、
a.どこでもMYカルテが、すでに実装の段階に入りつつある
b.医療だけではなく、介護福祉を包含するものになりつつある
c.認知症に関する問題がこれからの大きな課題になる
という、今回の第5回の課題~医療・介護・福祉を結ぶどこでもMyカルテ~を解題しました。
(当日の講演資料【PDF】はこちらから)
13:05
田城 孝雄教授(放送大学教養学部)
「地域医療再生計画における電子カルテネットワーク」
厚生労働省の地域医療再生計画における電子カルテネットワークの位置づけを明確にしました。今回の研究会の通奏低音となりました。
(当日の講演資料【PDF】はこちらから)
13:15
姫野 信吉理事長(医療法人八女発心会 姫野病院/福岡・八女郡)
「地域医療連携とどこでもMyカルテをクラウド上で実現」
(当日の講演資料【PDF】はこちらから)
13:35
片山 智栄先生(桜新町アーバンクリニック/東京・世田谷)
「医療と介護のどこでもMYカルテクラウド型在宅医療連携システム-EIR(エイル)-」
(当日の講演資料【PDF】はこちらから)
14:00
山口 典枝代表取締役(メディカルアイ株式会社/長野・須坂)
「クラウド型カルテによる情報共有を中心とした地域見守り支援システム」
(当日の講演資料【PDF】はこちらから)
14:25
松本 武浩先生(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療情報学)
「長崎県における「どこでもMy病院」への取り組み
「あじさいネットワーク」の全県展開によるボトムアップ型EHRの構築」
(当日の講演資料【PDF】はこちらから)
増山 茂 (どこでもMYカルテ研究会・東京医科大学渡航者医療センター) |
田城 孝雄教授 (放送大学教養学部) |
姫野 信吉理事長 (医療法人八女発心会 姫野病院/福岡・八女郡) |
片山 智栄先生 (桜新町アーバンクリニック/東京・世田谷) |
山口 典枝代表取締役 (メディカルアイ株式会社/長野・須坂) |
松本 武浩先生 (長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療情報学) |
この前半の4つの報告は、現場での地域医療・介護の連携のICT実践例がかなりのレベルに達してきたことを示しました。トライアルではなく次の実践ステップに入りつつあると言ってよいでしょう。
山口氏の長野県須坂での経済産業省のサポートによる実証実験は、地元の医療機関や薬局を結ぶケーブルテレビ会社を巻き込んだ3年間にわたるユニークな実践報告でした。ただ、公的支援が無くなったあといかに自立的に継続できるかが問題であるとのことです。
松本氏の長崎県でのケースでは、「ボトムアップ型」と言うとおり、市中病院・クリニック主導の、現場からの実需に基づいた医療情報共有システム作りでした。現在では長崎県の主要な基幹病院をすべて包括する素晴らしいシステムに成長しています。運営資金はすべて各医療機関からの会費でまかなっているとのことで、とても素晴らしい。
片山氏は在宅訪問医療を行う看護師である。多業種が混在して関わる在宅医療看護介護現場を問題にする。現在では紙ベースで処理されているそれぞれの業務が持つ多種類の「言語と文化」を共通の「単一言語」で扱うための解決法をICTの利活用により提案しiPADに実装して現場で検証中である。この将来には医療と介護を統合する可能性を感じさせる。
姫野氏は氏の地域で病院・クリニック・薬局・在宅の医療関係データを、患者の承諾がある場合に限り、許された者が共有化し可視化できる環境を、mashuup可能なwebserverをクラウドを利用することによりすでに実現させている。通常の電子カルテであればすべて利用可能であるし、stand alone の電子データでもある種のwrapingをすれば連結可能になる。紙情報であってもpdf化するなりすればこれに載せることができるという。大切なことはこのシステムを姫野氏は自分のお金と頭で作り上げた。そしてその成果「どこでもマイOpenNetKarte」を無償で供与するという。
15:05
北原 茂美理事長(医療法人社団KNI/北原国際病院)
「スマートホスピタル構想(仮題)」
座長:溝尾 朗先生(東京厚生年金病院内科部長)
北原氏は、医療情報健康情報介護情報とICT利活用などというレベルを超えた、より根本的な話をされた。「医療とは人の生死その全過程をプロデュースする総合生活産業」であるという視点にたって医療を見直す。病院の中でやっていることはそのほんの一部に過ぎない。現在それを地元の八王子、震災の東北、そして海外ではカンボジアで事業を展開しつつある。
(当日の講演資料【PDF】はこちらから)
15:45
黒岩 祐治神奈川県知事
黒岩知事は昨年の当選以来、以前から考えていた2つの原則のもと医療政策を神奈川の地で実現しようと努力している。
ひとつは、「内外に開かれた医療の実現、ふたつは、地域主権の医療。神奈川でのどこでもマイカルテ構想と医療特区(新しい医育教育機関の創設)がそれである。それを実現するために優秀な人材を集め万難を排して進めてゆくつもりである、と熱く語った。
16:00
森川 富昭先生(慶応大学藤沢キャンパス)
「神奈川県の医療グランドデザイン・Myカルテ構想」
座長:野口 聡先生(関東経済産業局 地域経済部長)
野田 啓一(慶応大学藤沢キャンパス)
森川氏は、その「集められた優秀な人材」の一人ともいうべき方であって、この3月31日までは徳島大にいて、大学病院をベースに素晴らしい仕事をされた。
今回はそれをベースに、内閣官房IT戦略室での討論を踏まえて、ナショナルデータベース構築の基礎的な展望をお話になった。神奈川県のリージョナルな課題解決の基盤となるものである。次年度以降の発展が期待される。
16:40
伊藤 弘人先生(国立精神・神経医療研究センター)
「次期医療計画と精神疾患:認知症・情報共有・地域連携」
伊藤氏の話された認知症・精神疾患領域の政策課題がこのようなICT関係者の会で語られるのは初めてではないだろうか。厚生労働省は昨年「4大疾病」と位置付けて重点的に対策に取り組んできたがん、脳卒中、心臓病、糖尿病に、新たに精神疾患を加えて「5大疾病」とする方針を決めている。精神疾患というと統合失調症・うつなどが重い浮かぶが、これからの高齢者医療とくにその地域連携・情報の共有問題を考えるとき、加えて認知症対策が大きな課題にならざるを得ないであろう。
北原 茂美理事長 (医療法人社団KNI/北原国際病院) |
溝尾 朗先生 (東京厚生年金病院内科部長) |
黒岩 祐治神奈川県知事 |
森川 富昭先生 (慶応大学藤沢キャンパス) |
野口 聡先生 (関東経済産業局 地域経済部長) |
野田 啓一 (慶応大学藤沢キャンパス) |
伊藤 弘人先生 (国立精神・神経医療研究センター) |
17:10
総合討論会
司会:竜 崇正(医療構想千葉代表、NPO法人医療福祉ネットワーク千葉理事長) 写真/左
田口 空一郎(構想日本・河北総合病院) 写真/右
発表者全員がステージに上り、座長やフロアからの質問に答え、マイカルテ普及に当たっての国と都道府県の関係、行政と現場の関係、また患者視点のシステム作りなどについて白熱した討論が30分にわたり行われ、残余は懇親会へと引き継がれた。
総合討論会の様子
17:40
閉会の挨拶 竜 崇正
小さな火花にすぎなかったどこでもMYカルテは、この2年間であちこちで発火して大きな班となり、今や結ばれて線となり、面を制する勢いである。さらにがんばろう。
懇親会の様子